地球で最も強力だと言われている磁石「ネオジム磁石」をご存じでしょうか。
最も強力な磁石で、原材料が安く、大量生産可能なため、電子部品からオモチャまで、幅広く利用されています。
例えば、非常に温度の高い自動車のエンジン部品、風力発電や電気自動車などのエコエネルギー技術の中核部品、小型のヘッドフォンの部品など、様々な場面で利用されています。
実は、ネオジム磁石は1984年に日本人の佐川博士によって発明されました。
佐川博士は、その後もネオジム磁石の改良を続け、その功労が認められ、2022年に「エリザベス女王工学賞」を受賞しました。
ネオジム磁石には次の特徴があります。
・特徴1 : 永久磁石の中で、最も強力な磁力
・特徴2 : 永久磁石の中で、最も高い保磁力
・特徴3 : 欠けにくく、割れくい
ここでは、ネオジム磁石の特徴について説明します。
更に、ネオジム磁石の劣化する原因と対策、ネオジム磁石の危険な側面についても説明します。
■地球最強の磁石「ネオジム磁石」の特徴を説明
ネオジム磁石が発明される前は、サマリウム-コバルト合金が最も強力な永久磁石でした。
しかし、材料費が高く、なかなか大量生産できず、市場に流通する事が難しい状況でした。
1983年、佐川博士はレアアースの中で3番目に資源量の多い「ネオジム」を鉄にを加え、更に耐熱性能を向上した「ネオジム磁石」を発明しました。
その結果、今では100円ショップでも購入できる程、大量生産され、市場に広く流通されるようになりました。
永久磁石の磁力を比較すると、次の順番になります。
1位: ネオジム磁石
2位: サマコバ磁石
3位: アルニコ磁石
4位: フェライト磁石
ネオジム磁石と、フェライト磁石の磁力の差は、実に8倍もあります。
・特徴1 : 永久磁石の中で、最も強力な磁力
ネオジム磁石が発明される前は、フェライト磁石が最も一般的に利用されていました。
佐川博士は、電子部品の開発に携わる中、磁石について様々な研究を積み重ね、レアアースである「ネオジム」が強力な磁力を持っている事を発見し、ネオジム磁石の発明に成功しました。
先にも書きましたが、ネオジム磁石はフェライト磁石の8倍の磁力を持っており、文字通り地球最強の磁石です。
・特徴2 : 永久磁石の中で、最も高い保磁力
磁力は、反対向きの磁界の影響により、低下します。
磁石が持っている磁力を無くすために必要な反対向きの磁界の力の事を「保磁力」と言います。
ネオジム磁石は、磁力だけでなく、保磁力も高い磁石です。
保磁力が高いため、減磁が発生しにくく、磁気を安定させる事ができます。
・特徴3 : 欠けにくく、割れくい
ネオジム磁石の原料は鉄であり、高い強度を持っています。
そのため、欠け・割れは、発生しにくくなっています。
そんなネオジム磁石ですが、完全に劣化を防ぐ事は困難です。
磁石が劣化する要因は、次の通りです。
・劣化する要因1: 経年劣化
どの様な永久磁石でも、時間の経過とともに磁力が低下していきます。
ネオジム磁石の場合、年間で 0.1%~0.3% 磁力が低下する程度のため、100年経っても1%~3%しか磁力が低下しない計算となります。
磁力の低下する量は少ないですが、確実に磁力は低下します。
・劣化する要因2: 温度上昇による劣化
磁石は一定以上の高温に晒されると、磁力が低下します。
ネオジム磁石の場合、320℃以上の高温環境で、磁力が低下します。
・劣化する要因3: サビによる劣化
磁石がサビでしまうと、サビた部分の磁力が低下します。
ネオジム磁石の劣化を防ぐ方法として、次の対策があります。
・対策1: 水分からの保護
ネオジム磁石は、サビやすいため、湿度の高い場所での使用・保管を避けます。
・対策2: 高温環境を避ける
ネオジム磁石は比較的熱に弱い磁石と言われています。
可能であれば、50℃以下の場所で使用・保管する様に注意します。
・対策3: 磁石の向きに気を付ける
複数の磁石を保管する場合、向きに注意しないと磁性の方向が変わる可能性があります。
磁石の破損の原因にもつながるため、注意が必要です。
・対策4: 衝撃を避ける
強い衝撃を受けると、欠け・割れが発生したり、劣化の原因になる恐れがあります。
落下する可能性のある場所での保管は避けるべきです。
ネオジム磁石を工業製品として利用する場合、劣化に対する配慮が必要になりますが、一般家庭でホビーとして利用する分には、あまり気にしなくても良いと思います。
そんなことより、一般家庭で利用する際は、もっと注意しなければならない、命に係わる危険な側面があります。
■ネオジム磁石の危険な側面
2022年6月24日、経済産業省は、ネオジム磁石を使った製品に「知育」「教育」といったキーワードを使用しないよう、関係各所へ通達しました。
実は、ネオジム磁石を誤飲した結果、手術で摘出する…といった事故が発生しているためだそうです。
国民生活センターの報告によると、2010年~2018年の間に発生した誤飲事故は、124件もあったそうです。
ネオジム磁石を誤飲すると、体内で消化器官を挟んでしまい、消化器官を傷つける場合があります。
体内で結合した磁石を取り出すためには、外科手術するしか手はありません。
■まとめ
ネオジム磁石の特徴、ネオジム磁石の劣化する原因と対策、ネオジム磁石の危険な側面について説明しました。
ネオジム磁石を使ったオモチャはインターネットで見かけて欲しいと思っていたのですが、よくよく考えるとあまり使い道が無い事に気づき、まだ購入していません。
磁石といえば、冷蔵庫の側面に備忘録を貼る磁力があれば十分だと考えていますが、「地球最強の永久磁石」と言われると、1個ぐらい欲しくなってしまいますね。